「家庭裁判所調査官」とは? 調査官の調査で気を付けるべきことは?

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家庭裁判所調査官の報告書 離婚コラム

家庭裁判所調査官とは

家庭裁判所調査官とは、日本の裁判所に勤務し、裁判官に行動科学の知見を提供することを主な職務とする国家公務員です。
家庭裁判所だけでなく、高等裁判所にも配置されています。
「家裁調査官」と略称されることが多く、単に「調査官」とも呼ばれます。
漫画やテレビドラマの「家栽の人」にも登場し、広く世の中に知られるようになりました。

裁判所に採用された後、約2年の研修を経て、医学・心理学・教育学・社会学・社会福祉学といった行動科学の専門性を身に着け、家庭裁判所調査官に任命されることになります。

家事事件や少年事件にて、調査の任務を行い、裁判官に意見を述べる権限を持ちます。

家庭裁判所調査官の任務

裁判所の手続きで親権や監護権を争う場合、ほぼ確実に、裁判所は家庭裁判所調査官を指名し、調査を行います。
実際に子供と親が一緒に過ごす様子を観察するのは、裁判官ではなく、家庭裁判所調査官です。

この家庭裁判所調査官による報告が、実は絶大な影響力をもっています。
家庭裁判所調査官は、どちらが監護者・親権者であるべきかという評価にかかる部分まで、裁判官に報告をします。
裁判官は、調査官の報告書に則った判断をすることがほとんどです。

監護者・親権者を判断しているのは、実質的には裁判官ではなく、調査官だと思った方が良いでしょう。

家庭裁判所調査官による調査の評価基準

親権・監護権を争う際には、ほぼ確実に、家庭裁判所調査官による調査が行われます。
この調査は、親権を勝ち取るためには、非常に重要です。
この調査で、大切な子供の人生が決まるという心構えで、十分な準備をしましょう。

調査官との面談では、自分がいかに子育てに努力してきたかなど、熱意をもって語りましょう。

家庭裁判所調査官は、父母のどちらと暮らす方が、子供がより幸せで、心身ともに健やかに成長できるかを見定めます。
親権・監護権争いの場合に、家庭裁判所調査官が重視する主なポイントを紹介します。

現在、どちらが子供を監護しているか

裁判所は、現在の子供の生活を大きく変えることには抵抗感を持っているようです。
そのため、既に父母が別居している場合、現在どちらが子供を監護しているかという点は、非常に強く影響します。
これは、継続性の原則などと呼ばれることがあります。

親権を争うのであれば、決して子供と離れて暮らさないように気を付けましょう。
別居時にどちらが子供を引き取ったかが、後々の親権争いの決定打になることが多いです。

継続性の原則があまりにも重要であるため、配偶者に無断で子供を連れ去る事件も、日本では数多く発生しています。

本来、子供を連れ去ることは違法行為ですので、不法に子供を連れ去ると、親権争いでもマイナス評価されることもあります。
しかし、「DVからの避難」などの大義名分があれば、「連れ去りは不法とまでは言えない」と、連れ去りが追認されてしまうこともあります。
これが、「虚偽DV」と「実子誘拐」という社会問題が生まれている元凶です。

筆者の私見としては、継続性の原則は過度に重視せず、父母のどちらが親としてより適格かを重視する方が、子供の利益にかなうのではないかと考えます。

これまで、父母のどちらが子供の面倒を見てきたか

子供が産まれてから、父母が別居に至るまで、どちらがより多く子供の面倒をみていたかも重要視されます。

面倒をみるというのは、以下の例のような、身の回りの世話のことを指します。

「身の回りの世話」の例

  • ミルクをあげる
  • 寝かしつける
  • ご飯を食べさせる
  • オムツを替える
  • 服を着替えさせる
  • 風呂に入れる
  • 保育園に連れていく

日本では、共働き家庭が増えてきたとはいえ、まだ母親の方が子供の面倒をみている家庭が多く、この観点では父親が不利になりがちです。

筆者の私見では、「家族の生活のために外で働く」というのも評価されるべきだと考えるのですが、残念ながら、これはほとんど評価されないようです。
「今まで通り、外で働いて養育費を払えばよい」と判断されるようです。
合理的ではありますが、家族のために働く労働者の立場から考えると理不尽だと思います。

子供自身の意思

子供自身の意思については、幼児の頃は、あまり関係ありません。おもちゃやお菓子などで、簡単に意見が変わってしまうこともあり得るためです。

子供が成長するにしたがって、判断能力もついてくるので、意見が重視され始めます。
子どもが15歳以上の場合は、裁判所が子どもの意見を聞くことが義務付けられています
実務上は、10歳ごろから子どもの気持ちを確認し、親権の判断に反映させることが増えてくるようです。

きょうだい不分離の原則

子どもが複数いる場合は、兄弟姉妹が引き離されないように、兄弟全員を同じ親を親権者に指定すべきであるとする考え方です。
兄弟姉妹が一緒に暮らすことが、子供たちの情緒の安定や、健全な人格形成にもつながると考えられているためです。

面会交流の寛容性

自分が子供の親権者となった場合に、もう片方の親との面会交流に寛容であるかも重要です。

父母が離婚すると、夫婦ではなくなりますが、親子関係は変わりません。
そのため、離れて暮らしている別居親とも定期的に会ったり連絡を取り合ったりすることで、愛情を注ぎ続けてもらうことは、子供の健やかな成長の観点からは、常に重要です。

親権を争った父母は高葛藤になることも多いのですが、子供の「別居親にも会いたい」という気持ちを尊重できるかどうかが、親権者としての適格性を判断するポイントとなるのです。

監護体制(育児のサポート体制)

ひとり親になると、子供を経済的に養いながら、育児も一人で担っていくことになりますが、これは非常に険しい道です。

そのため、近くに祖父母や自分のきょうだい・親戚が住んでいるなど、適切な監護補助者による育児のサポート体制を整えることができるかも非常に重要視されるポイントです。

労働時間が長いことが多い父親側は、特にこれが求められます。
監護体制を構築することができなければ、親権を勝ち取ることは難しいでしょう。

母性優先の原則

「母性優先」の原則とは、子どもとの精神的・情緒的な結びつきの強いほうを親権者として優先すべきとする考え方です。

かつては、特に乳幼児期は母親が優先されるべきとする「母親優先の原則」という考え方もありました。しかし、近年は共働き世帯も増え、子どもの面倒を見る父親が増えてきたことから、子供と一緒に過ごしてきた時間の長い方、そして子供との精神的・情緒的な結びつきの強い方を親権者とすべきとする考え方に変わってきています。

そのため、必ずしも「母親が父親よりも優先される」という原則ではありません。

最低限の経済力

経済力については、養育費もあるため親権を判断するうえであまり重視されることはありません。

しかし、病気で働くことができない、住居を用意できないなど、必要最低限の経済力がない場合は、不利になることもあるでしょう。

家庭裁判所調査官の調査内容

子供の年齢や現在の生活状況などによって、調査内容は多少変わることもありますが、基本的にはどの家庭にも似たような調査が行わることが多いです。

家庭裁判所調査官は、男性1人・女性1人の2人で一つの事件を担当することが多いようです。

父母それぞれ個別に呼び出して面談したり、子供と一緒に過ごす様子を観察したり、監護補助者へのインタビューなどを通じて、親権の適格性を評価します。

筆者の場合は、何を聞かれるのか、どんな所に注目されるか全くわからないまま調査に臨むのが心配なので、事前に本を読んで備えました。
「離婚をめぐる親権 ・ 監護権の実務――裁判官・家裁調査官の視点をふまえた弁護士実務」という本です。
現役の家庭裁判所調査官が、子供の年齢に応じた調査実務を解説しているページがあります。
この本を読み込んでいたおかげで、気持ちの余裕をもって面談や家庭訪問を迎えられたので、読んで正解だったと思います。

それぞれの親と面談

まず最初に、父母それぞれが調査官と面談を行うことが多いようです。

家庭裁判所で面談を行う場合もありますし、家庭訪問のときに面談を行うこともあります。
筆者の場合は、家庭裁判所に呼び出され、弁護士と一緒に面談を行いました。

面談の内容は、夫婦が初めて出会った時から、妻が妊娠し出産するまでの生活状況、子供が産まれてからの生活状況などを、事細かに聞かれます。

別居している場合は、別居後の生活状況や子供の様子、今後親権を任された場合に、どのように子供を育てていくかなど、1時間の面談の中で、あらゆることを調査されます。

筆者が、実際に面談を受けた時の体験談は、こちらの記事を参照してください。

調査官による家庭訪問

次に、家庭裁判所調査官による家庭訪問が行われます。
筆者の場合は、家庭訪問も、大体1時間くらいの所要時間でした。

家庭訪問では、子供と一緒におもちゃで遊ぶなどして過ごすところを観察されます。
子供はもちろん、同居している祖父母、その他の監護補助者がいる場合は、それらの方も同席し、子供との関係などを見られます。

筆者の場合は、弁護士の同席は不可でした。

家庭裁判所調査官は、家の広さは十分か、育児環境は清潔か、といった住環境もチェックします。
事前に掃除をしておきましょう。特に、トイレなどの水回りは、入念に清潔にしておいた方が良いでしょう。

また、おもちゃや教材など、子供のための環境が整っているかといった点も見られます。
筆者の場合は子供が幼児だったので、トイレにはトイレトレーニング用のシールやひらがなの50音表などが貼ってありましたが、そういったことも報告書に記載されていました。

筆者が実際に、家庭裁判所調査官の家庭訪問を受けた時の日記は、こちらの記事を参照ください。

保育園や学校などへの調査

家庭裁判所調査官は、子供が通っている保育園・幼稚園・学校などにも訪問調査を行うことがあります。

調査官が、保育園・幼稚園・学校等に直接連絡して、訪問調査の日程調整を行います。

親は何かする必要はないのですが、保育園・幼稚園・学校等の先生には、家庭の状況と調査官の調査が来る旨を事前に連絡しておきましょう。事前の説明なしで裁判所から連絡が来ると、先生方も驚いてしまいます。

家庭裁判所調査官の調査報告書

すべての調査が終わると、調査官は調査報告書を作成します。
調査報告書が出来上がるまでは意外と長い時間を要します。筆者の場合は調査が終わってから1か月程度かかりました。場合によっては、2~3か月かかることもあります。

調査報告書が完成すると、裁判所から完成の連絡が来ます。
調査報告書が送られてくることはありませんので、自分で裁判所に出向いてコピーを取る必要があります。
弁護士に委任している場合は、弁護士が対応してくれると思います。

調査報告書には、調査官の調査にてどのような行動・発言があったか具体的に書かれ、それらを踏まえて、父母のどちらの方が親権者としてふさわしいかまで書かれます。
この意見が、裁判官による親権者の判断にも大きな影響を与えます。

そのため、冒頭でも述べた通り、親権者を決めるのは実質的には家庭裁判所調査官であると考えて、真剣に調査に臨むべきなのです。

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