「片親疎外」とは? 子供への悪影響は? 治療法はあるのか?

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片親疎外 離婚コラム

日本では、毎年約20万組が離婚しています。
未成年の子がいるのは、そのうちの約6割に上ると言われています。

父母の離婚は、子供の人生や心身の発達に、大きな影響を与えます。
子供への大きな悪影響の一つに、「片親疎外」によって引き起こされる問題があります。

片親疎外は、同居親の心がけ一つで防ぐことができます。
筆者も親権をもつ一人親ですが、父母の離婚による子供への悪影響を少しでも軽減するように、片親疎外についても勉強しました。

私が学んだ片親疎外について、「片親疎外は児童虐待だ」という認識を社会に少しでも認知してもらい、この虐待を少しでもこの世から減らすために、この記事でシェアしたいと思います。

片親疎外(Parental Alienation:PA)とは?

片親疎外とは、子供が片方の親の影響を受けて、正当な理由なく、もう片方の親との交流を拒絶する事態のことをいいます。

同居時は大好きだった片親のことを、別居して生活しているうちに憎むようになり、攻撃的な態度に出るようになるのです。
その背景には、同居親による洗脳があります。

父母が別居状態になると、子供は同居親の影響を強く受けます。

同居親が、別居親の悪口を子供に吹き込むなどの好ましくない行動を取ると、子供と別居親との関係は不当に破壊されてしまいます。
同居親は、意識的でなくても、別居親に関する愚痴などを子供の前でこぼしてしまうことがありますが、こういった悪気がない場合でも片親疎外は起こりえます。

片親疎外症候群(PAS)とは?

片親疎外症候群(PAS)とは、1980年代初め、アメリカの精神科医リチャード・A・ガードナー氏によって提唱されました。現在は、片親引き離し症候群とも呼ばれています。

片親から引き離すことによって、子どもに分離不安、摂食障害、抑うつなどの症状が見られることがあり、その症状のことを片親疎外症候群とよびます。

「症候群」という名前がついているので、病気のようなイメージを持たれるかもしれませんが、症候群や疾患として認定している医学的な専門機関は、現時点ではありません。

片親疎外症候群(PAS)と認定できる条件

具体的には、以下の三要素がそろったら、片親疎外症候群(PAS)と認定できるとされています。

  • 別居親に対する一連の誹謗中傷や拒絶(エピソードが単発的ではなく、持続的)
  • 不合理な理由による拒絶(別居親の言動に対する正当な反応といえない疎外)
  • 同居親の言動に影響された結果としての拒絶

片親疎外症候群(PAS)の子供に見られる主な症状

また、ガードナー氏は、片親疎外症候群(PAS)の子供に見られる主な症状として、以下8項目を挙げています。多くの場合、PASの子どもはこれらの症状のほぼ全てを示すことが知られています。

  • 一連の誹謗中傷(別居親に対する嫌悪感や恐怖心を表明し、激しく誹謗中傷する)
  • 説得力に欠ける馬鹿げた合理化を伴う非難(大げさ、非現実的な理由で別居親を非難する)
  • 両面感情の欠如(同居親は「全部良い」、別居親は「全部悪い」になる)
  • 別居親を拒絶しているのは「自分の考え」であると強固に主張する
  • 両親の争いにおいて同居親の意向を反射的に支持する
  • 別居親に対するひどい言動について罪悪感を持たない
  • 借りてきた脚本(同居親が語る別居親に対する「敵対発言」や「不満の物語」をなぞる)
  • 別居親の親戚や友人にまで敵意が及ぶ

片親疎外の子供への影響

片方の親を否定することは、自分の半分を否定しているようなものです。そのことにより、アイデンティティーを確立し、健全な自己肯定感を育むことが難しくなります。

例えば不登校になるなど、子供の精神面に悪影響を与えるケースが数多く存在します。
また、表面的には問題なさそうに見える子供でも、別居親のことになると目の色を変えて攻撃的になるなど、二面性があることもあります。

そうなってからでは、専門的な知識がないと対処できません。
だからこそ、離婚によりひとり親になる同居親は、離婚時から片親疎外について理解しておくことは非常に重要です。
別れた配偶者のことを快く思わないことは仕方がないことですが、子供の前では、悪口や愚痴を口に出すことは控えましょう。子供のためになりません。

片親疎外は治療できるのか

このような病的な「片親疎外」ですが、面会交流を増やすことで、症状を軽減することもできます。

同居親に洗脳された子どもに関する最も大規模な研究は、アメリカ法曹協会によって報告されています。

『離婚毒ー片親疎外という児童虐待』(リチャードA.ウォーシャック著、青木聡訳)によれば、裁判所が子どもと別居親との面会交流を増やした約400件の事例のうち、9割において(そのうち半数は、子どもが別居親との交流を強く拒否していたのですが)、子どもと別居親との関係が好転し、さらに子どもの心理社会的な問題・学業成績の問題・身体症状の問題が、軽減ないし消失したという統計もあるそうです。

片親疎外は児童虐待だ

PASは、「洗脳虐待」と呼ばれることもあります。

離婚するのは夫婦の都合ですが、子供にとっては同居親も別居親も、親のままです。

別居親にDVや虐待が無かったのであれば、理不尽に親子の縁を断絶させるべきではありません。
上記の通り、子供の健全な成長にも悪影響を及ぼすのですから、意図的に片親の悪口を吹き込むような行動は、虐待以外の何物でもありません。

筆者も幼児の親権を持つひとり親の立場なのでよくわかるのですが、親権者は子供をたやすく洗脳したり、別居親との関係を悪化させることができてしまいます。

しかし、それは児童虐待なのです。

子供が健やかに成長するため、子供と別居親との関係を良いものにするよう努力することが、同居親としての務めだと思います。

そして、片親疎外を防ぐことが、同居親の善意にのみ委ねられていると感じます。
親の離婚を経験した子供に聞くと、同居親から別居親の悪口を言われた経験を持つ子供は、非常に多く存在するようです。

不当な親子断絶を防ぐためにも、こういった子供たちに適切な支援が必要だと考えます。

離婚毒ー片親疎外という児童虐待

子どもがいる夫婦の離婚は、親権・監護権をどちらの親が持つのかでもめ、裁判離婚になるケースも多いが、離婚(別居後)に問題となるのが、別居親への片親疎外です。

諸外国では、同居親が子どもと別居親の交流を悪質に妨害することは情緒的虐待と見なし、離婚紛争に関わる専門職は、監護権査定で「片親疎外」を見分けるという重大な役割を背負うようになってきています。

本書は、この片親疎外のメカニズムを解明し、安全な面会交流を実現させる方策を述べています。

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