不倫・離婚など法律トラブルの時によく利用される「内容証明郵便」。
「聞いたことはあるけど、具体的にどのようなものなのか知らない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、内容証明郵便について、どのようなメリットがあるのか、どんな場面で使うと効果的なのか、などを解説します。
内容証明郵便は、一度差し出してしまうと、証拠として残りますので、やりなおしが効きません。
送付する前に、ぜひ、この記事を読んでください。
内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、「いつ」「誰が」「誰に」「どういう内容の」郵便を送ったかを日本郵便が証明してくれる郵便を指します。
「言った言わない」のトラブルを回避することができるので、不倫相手に警告や慰謝料請求を送る場合などによく使われます。
内容証明郵便には法的な効力はありませんが、相手に対して決然たる態度を示し、心理的なプレッシャーを与えることは期待できます。
この記事では、内容証明郵便について、考えられる効果や送り方・送った後の対応などについて、当事者だった筆者の経験なども踏まえて解説します。
なお、内容証明郵便は、内容だけなく、その文書が配達されたことも証明できなければ意味がありません。そのため、一般的には、一般書留郵便物等を配達した事実を証明する「配達証明」のサービスも併せて利用します。
内容証明郵便の効果
①相手のアクションを促し、膠着した事態を動かしやすい
内容証明郵便は、通常、相手に何らかの行動を促す内容となっています。(お金の支払い、代理人への連絡など)
LINEや普通郵便などで連絡しても無視されるような場合でも、内容証明郵便で連絡することで、相手が何らかのアクションを起こす可能性が高まり、トラブルの早期解決につながりやすいのです。
内容証明郵便であれば、確実に伝えた証拠が残るので、後々「聞いていない」という主張ができません。
それに、無視すると法的手段に出るというプレッシャーも与えるためです。
しかし、内容証明郵便自体は、いわば単なる通知です。法的効力が生まれるわけではありません。
例えば慰謝料請求であれば、内容証明郵便で通知しても、相手に直ちに支払い義務が発生したり、財産を差し押さえできるようなわけではない点に留意してください。
②裁判で証拠となる
裁判になれば「言った言わない」など当事者同士の主張がかみ合わないことが多いです。
内容証明郵便を使うことで、「いつ誰が誰に何を伝えた」という証拠が残ります。
手元に控えが残り、裁判でも証拠として提出することができるので、相手が「聞いていない」という主張をすることができなくなります。
もちろん、逆に受取側が証拠として提出することも可能です。
例えば、脅迫に該当する内容を内容証明郵便で送ってしまうと、送った方がかえって不利となることもあります。
③心理的なプレッシャーを与える
内容証明郵便は、いわば単なる通知です。内容に法的効力が生まれるわけではありません。
しかし、普通の人は内容証明郵便を受け取る経験はほぼありません。
そのため、内容証明郵便が送られてくると、「大変なことが起こった」という印象を受けます。
内容証明郵便を送ることでプレッシャーを与え、他の手段で連絡しても応じない相手であっても、真剣に対応し始めるケースもあります。
弁護士名で送れば、プレッシャーを与える効果がさらに高まります。
④慰謝料請求の時効完成を引き延ばす
内容証明郵便を使うことで、慰謝料の時効完成を引き延ばせることがあります。
不倫慰謝料の場合、慰謝料請求の時効は以下の通りです。
時効完成間際の場合、内容証明郵便などを送付して慰謝料を請求すると、催告をしたときから6か月間は時効の完成が猶予されます。その間に交渉での解決をはかるか、裁判を起こすことができます。
内容証明を送らない方が良い具体ケース例
①相手との良好な関係を保ちたいとき
内容証明郵便は、こちらの固い意思を見せることにより相手に心理的プレッシャーを与えることができますが、相手を怒らせてしまう可能性が高いです。
そのため、もしトラブル解決後も相手と良好な関係を保ちたい場合は、内容証明郵便は送らない方が良いでしょう。
②相手がすでに誠意をもって対応しているとき
既に話し合いが始まっており、相手もトラブル解決の為に努力している場合は、そのまま話し合いで解決したほうが良く、内容証明郵便は利用しない方が良いでしょう。
このような場合に内容証明郵便を送ってしまった場合、相手がかえって憤慨し、トラブルがこじれたり、裁判になったり逃げられたりするなど、逆効果になる可能性があります。
③今後の戦略が定まっていないとき
内容証明郵便は、自分にとっても証拠として使えますが、相手にとってもまた、証拠として使えます。
そのため、内容証明郵便を送付して意思表示をすることにより、自分がかえって不利になることもあります。
例えば、自分の意思が相手に伝わることになりますので、準備期間を与えることで、証拠隠滅や逃亡などをされてしまうこともありえます。
内容証明郵便の利用方法
内容証明郵便の利用方法は、普通の郵便とは異なります。
まず手紙を持参する郵便局ですが、内容証明郵便は全ての郵便局で利用できるわけではなく、取り扱っている郵便局は限定されています。
内容証明郵便を利用できるのは、「集配郵便局」と「支社が指定した郵便局」のみです。
内容証明郵便を自分で出す場合は、取り扱っている郵便局を事前に確認しましょう。
次に、郵便局に提出する書類です
まず最初に、受取人に送付する内容文書の原本を作成しましょう。
次に、その原本をコピーした謄本2部を用意します。
原本は相手方に送付され、2部の謄本は、1部が郵便局に保存され、もう1部は差出人の控えとなります。
また、差出人と受取人それぞれの住所・氏名を記入した封筒も用意する必要があります。
この封筒に文書の原本が入れられ、受取人宛に送付されます。
内容文書・謄本・封筒のいずれも、用紙の大きさ・材質・ペンの種類などは決まったルールはありません。
ただし、文字数と行数についてはルールがあります。また、文字数のカウント方法も細かなルールがあります。
これらを、内容証明郵便を取り扱い可能な郵便局の窓口に持参し、郵便料金を支払います。
料金は、一般書留の料金に、さらに内容証明の加算料金が加わります。
内容証明の加算証明は枚数によっても異なりますので、詳細は郵便局のWEBサイトにて確認しましょう。
内容証明郵便の書き方
内容証明郵便の用紙の形式
内容証明郵便の用紙の材質や大きさには制約はありません。自由です。
枚数も制限はありません。
但し、枚数に応じて料金がかかります。
手書きかパソコンかも問いません。
最近は、ほとんどの方がパソコンで作成しているようです。
複数枚の場合は、すべてホッチキスで綴じて、ページの継ぎ目のすべてに割り印を押す必要があります。
内容証明郵便の1枚当たりの文字数・行数
内容証明郵便は、文字数に制限があります。
1枚当たりの行数や、1行当たりの文字数は、縦書きと横書きで異なります。
内容証明郵便の文字数のカウント方法
- 全角・半角は関係なく、どちらも1文字とカウントされます。
- 句読点やカッコも1文字としてカウントされます。
- カッコについては、はじめのカッコは1文字としてカウントされますが、閉じカッコはカウントされません。
内容証明郵便に必ず記載すること
差出人と受取人の住所・氏名は必要事項です。
内容証明郵便には、必ず記載しなければなりません。
差出人と受取人のどちらを先に書いても問題ありません。
なお、内容証明郵便は、受取人が個人である場合は自宅住所へ、法人である場合は本店所在地に送るのが原則です。
勤務先など、受取人個人の自宅住所以外の場所に内容証明郵便を送る場合は、プライバシーの侵害や名誉毀損など、法に触れる危険がありますのでご注意ください。
押印は不要ですが、押印する人も多いようです。
表題も、書く必要はありません。
時候の挨拶も不要です。要件だけ書くことが一般的です。
内容証明郵便には、手紙以外は同封できない
普通の郵便物であれば写真などを同封することもできますが、内容証明郵便の場合は、手紙以外の物を同封することはできません。
そのため、内容証明郵便で写真などを送りたい場合は、
「必要があれば、〇〇を送ります」
「別郵便で〇〇をお送りしました」
などと記載することが一般的です。
内容証明郵便の封筒の書き方
内容証明郵便は、封筒の種類やサイズには制限がありませんので、普通の封筒を使って問題ありません。
封筒の表には、受取人の住所・氏名を記載します。
封筒の裏または下に、差出人の住所・氏名を記載します。
封筒に記載する差出人と受取人は、内容証明の「通知人」欄と「被通知人」欄の記載と同じように書く必要があります。
内容証明郵便の内容にマンション名、電話番号などが記載してあれば、封筒にも同じように記載します。
なお、封筒には封をせずに、郵便局に持参して下さい。
内容証明を送った後の対応
受け取り拒否された場合の対応と注意点
内容証明郵便は、受取人が受け取り拒否することもできます。
その場合は、差出人に「〇月〇日に、本人は在宅だったが受け取り拒否をされた」という情報が伝わります。
しかし、内容証明郵便は受け取らなければ内容がわからないため、受け取り拒否されることは滅多にありません。
なお、受け取り拒否は、不在とは違います。
不在の場合は、内容証明郵便は配達されず、ポストに不在票が投函されます。
そして、保管期間の1週間以内に、受取人が再配達の依頼をしなければ、差出人に返送されてしまいます。
ちなみに、既にトラブルが顕在化しており、受取人が内容を読まなくても内容を推測することが十分可能であった場合は、受け取り拒否をされた場合でも、法律上は「手紙は到達した」とみなされることもあります。
それでも万が一受け取り拒否をされてしまった場合は、次の手を考える必要があります。
内容証明郵便を、弁護士名で改めて送付する
本人の名前で送付しても受け取り拒否をされる場合、弁護士名で送ることで相手にプレッシャーを与えることで、受け取ってくれる可能性が高まります。
勤務先に内容証明郵便を送る
自宅に内容証明郵便を送っても受け取り拒否されてしまう場合、勤務先に送るというのも一つの手です。
勤務先に送れば、本人ではなく受付の方が受領し、本人に手渡してくれるケースもあります。
この場合は、受取人の意思では受取拒否できません。
また、勤務先では周囲の目が気になるなどの理由で、受取拒否せずに、本人が受け取ってくれる可能性もあります。
訴訟を提起する
第三に、上記の方法によっても内容証明を受け取らない相手方に対しては、「訴訟を提起する」という方法があります。
相手方が内容証明の受取すら拒否するのであれば、話合いで解決できる可能性は低いでしょう。
そのようなケースでは、いずれにしても訴訟などの法的手段を取ることが必要となります。
裁判によって相手方の債務が確定されれば、強制執行により相手方の財産を差押えをすることも可能になります。
内容証明郵便が無視された場合の対応
内容証明郵便を受け取ったにも関わらず、指定した連絡の期限を過ぎても相手方から何の連絡もないというケースもあります。この場合は、差出人は、次の手を考える必要があります。
内容証明郵便には法的効力があるわけではありません。
受取人に無視されても、受取人の財産を差し押さえるなどの強制力のある手続きを直ちに行うことはできません。
そのため、受取人が内容証明郵便を受け取ったうえで無視している場合は、そのような強制力のある手続きを利用するために、裁判を起こすのが良いでしょう。
内容証明郵便で指定した連絡期限を過ぎた段階で、速やかに弁護士に相談するのが望ましいと考えられます。
「裁判をするか」「いつ裁判を起こすのが良いか」なども含めて、弁護士と十分にすり合わせて方針を考えましょう。