「共同親権」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
先日は卓球の福原愛さんの離婚のニュースで話題になりましたが、日本で暮らしているとあまり馴染みがない言葉だと思います。
日本では、子供の両親が離婚すると、父母のどちらか片方だけが親権者になることが、多くの日本人に「当然のこと」として受け入れられています。
日本は「離婚後単独親権」という制度なのです。
しかし、世界中を見渡してみると、ほとんどの国に「離婚後共同親権」という制度があります。
この記事では、日本では馴染みがない「離婚後共同親権」という制度について、全く知らない方にも簡単に理解できるように、丁寧に説明します。
共同親権とは?
共同親権とは、父母が離婚した後、両方に親権を認める制度
共同親権とは、離婚後も父母の両方に親権を認める制度・考え方のことです。
父母が結婚している間は、日本でも、当たり前ですが共同親権が認められています。
父親も母親も、子供の親権者なのです。
しかし、離婚した後は、日本では単独親権となります。
たとえ両親ともに親権者として問題ない場合であっても、父親か母親かいずれか片方は、強制的に親権を失うのです。
これは、民法で定められているルールです。
(離婚又は認知の場合の親権者)
民法
第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
「共同親権」とは、離婚後も、離婚前と同じように、父母ともに親権を持つことができるようになる制度です。
共同親権が導入されると、子供への教育内容や仕事の許可、財産の管理なども両親とも行えます。
子供をしつけるためにしかる権限も、父母の双方に認められます。
今の日本の単独制度では、親権者になれなかった親は、その後一切子どもの教育に口出しできません。
子どもをしつける権利もなく、子どもと関わるのも遠慮しなければならないことが多いのです。
もし日本に共同親権が導入されたら、こういった風潮が大きく変わることが期待されます。
ほとんどの先進国には離婚後共同親権制度がある
海外に目をやると、日本以外のほとんどの先進国では、離婚後も共同親権が認める制度があります。
欧米諸国はもちろん、韓国などのアジアにおいても、離婚後共同親権制度が導入済みです。
日本の親権制度を定めている民法は、元はと言えば、ドイツの民法を参考に作られています。
そのドイツでも、1982年に連邦憲法裁判所が単独親権制度について違憲判決を下し、これがきっかけで離婚後の共同親権が法制度化されました。
単独親権制度が問題視されている背景
日本では、離婚後は父親か母親のどちらか一方を親権者と定める必要があるため、親権争いが生じます。
熾烈な親権争いにより、父母が高葛藤になり、離婚問題が長期化する傾向にあります。
親権は分け合うことができないため、どうしても親権を勝ち取りたい親が、子供の連れ去りを行うなどといった問題にもつながることがあります。
また、離婚後に親権を取れなかった親は子供とのつながりが徐々に希薄になることもあります。
その結果、面会交流の断絶や養育費の未払いの原因になっているという指摘もあります。
こういった背景があるため、近年、日本でも、離婚後の共同親権の導入が検討されています。
国際離婚が国際問題に発展することも
近年、離婚時の共同親権導入が検討されていることの経緯には、国際離婚の際の子供の連れ去りが国際社会で批判されていることも、一つの要因であると言われています。
日本では、裁判で親権を争う際には、子供と一緒に生活をしている親が有利になる傾向があります。
そのため、離婚の際、日本人親が子供を連れ去ってしまう事例が数多く生じています。
国境を跨いで子供を連れ去ると「ハーグ条約」に抵触するため子供は連れ戻されるのですが、日本国内での子供の連れ去りは、処罰されることなく実行できてしまいます。
このように、「国際離婚により日本人が子供を連れ去ることで、外国人の親が子供に会えなくなる」という問題が生じ、諸外国から批判を受けていました。
- 例えば、国際連合の「児童の権利委員会」は、2019年2月に日本に対して、「児童の最善の利益である場合に、外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正し、また、非同居親との人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保する」ために必要な措置をとるよう勧告しました。
- 欧州連合(EU)は、2020年7月に、EU加盟国の国籍者と日本人との夫婦が離婚した場合などに、日本人の親が日本国内で子どもを一方的に連れ去ることなどを禁止する措置を日本に要請する決議案を採択しました。
- 2021年7月には、日本人妻に子供を連れ去られたフランス人男性のハンガーストライキもあり、日仏首脳の共同宣言に「子の利益を最優先に対話」という文言が盛り込まれました。
このように、先進国では珍しい離婚後単独親権制度を日本が採用していることが背景となり、国際問題となる事象も発生しているのです。
日本に離婚後共同親権制度は導入できるのか
元大阪府知事・大阪市長の橋下徹氏は、離婚後共同親権を指示していることで知られています。
橋下氏は、日本で離婚後共同親権制度について、このように述べています。
夫婦がいろんな事情で離婚しても、子どもとの関係は別じゃないですか。
だから、夫婦が離婚しても、子どもに対しては、共同に親権を持つというのが、これが原則なんです。ただ、夫婦の事情によっては、例えばDVとか、暴力があるとかということで、離婚をしたあとに、共同親権を行使できない事情もあるから、こういう場合は、単独親権もありだと思います。
だから、それは家庭の事情。
子どもの利益を考えて、原則は共同親権だけども、どうしてもできない事情、そういう事情のときには単独親権。
これが本来の姿ですよ。一部の人たちは、『夫婦間のDVとか、特殊事例をもって単独親権じゃないとだめなんだ』、『共同親権になったら、夫婦間でまた顔を合わせてDVが発生するじゃないか』と主張するんだけど、そうじゃない家庭だってあるんだから、単独親権を主張する人たちは、やっぱり子どものことを考えて、共同親権ができる家庭は、共同親権を認めると考えを改めてほしいですね。
FNNプライムオンライン
筆者は、親権を持つ同居親の立場ですが、橋下徹氏の意見には賛成です。
両親が離婚しても、子供にとって、親であることは変わりありません。
確かにDVや児童虐待は防がなくてはなりませんが、DVや虐待のない親からも強制的に親権を取り上げるべきとは思わないのです。
筆者の場合、単独親権しか選択肢がなかったことにより、親権争いが激化し、父母が必要以上に高葛藤になったという実感があります。
原則共同親権とすれば、父母が歩み寄ることにより、子供が必要以上に不幸にならなくてすむケースは、きっと少なからず存在すると思います。
父母共に親権者として大きな問題がない場合は、離婚前と同じように、父母共に親権者として協議しながら子供を育てていく方が、子供も幸せになると思うのです。
根強い反対意見も多い共同親権ですが、日本がより幸せな国になるよう、子供視点での議論が活発に交わされることを願います。