子供の連れ去り問題とは表裏一帯の、DVや児童虐待からの避難に関する記事です。
夫婦の不仲に伴う子どもの一方的な「連れ去り」が問題になり、共同親権や面会交流義務化などの議論が活発化しています。一方で、心身に深い傷を負ったDV被害者やその支援者からは被害者の保護・支援態勢が不十分なままでの性急な導入に警鐘を鳴らす声が。関東地方で暮らす30代の女性もその一人。「あの時の私には、息子を連れて逃げるしか、方法がなかった」。そう振り返ります。
(中略)
だが、結婚すると態度は一変した。毎日朝から夕方まで治療院の受付や事務の仕事をするよう言われたが、当然のように給料はなく、「経営が厳しいから」と生活費も満足に貰えなかった。家では家事と寝たきりの義父の介護。月末になると生活費が足りずに消費者金融で借金をしたことも。たまらずバイトをすると「浮気をしている」と激昂され、胸ぐらをつかまれたり、足蹴にされたりした。
(中略)
離婚を切り出すと元夫は怒り狂った。説得と激昂を何度も繰り返したある夜、あまりの恐怖に女性は110番。警察官に付き添われ、息子を連れて家を出た。「どれだけ話しても離婚には応じてくれない。今しかないと思った」。着の身着のままで、わずかな荷物。脚にはケガも追っていた。
まいどなニュース
「避難」と「連れ去り」
夫から激しいDVを受け、子供を連れて避難せざるを得ない状況に追い込まれた女性の記事です。これは、「不法な連れ去り」とは違います。保護されるべき避難といえるでしょう。
しかし、お互いに証拠が無い状態で、「DVからの避難だったので連れ去りではない」「虚偽DVだ。不法な連れ去りだ」と争うと、第三者から見てどちらが正しいかわかりません。このことが、共同親権の問題を複雑にしています。
確かに、DV被害者は保護しなければなりません。一方、別居親との断絶を図るためのDV捏造も許されることではありません。問題は、「証拠が不明確な時にどちらを守るべきか」という制度設計です。
浅知恵ではありますが、例えば面会交流への第三者の立ち合いの費用を補助する、面会交流での虐待や連れ去りを厳罰化するなどといった工夫で、親子断絶を減らすことはできないものかと思慮します。
共同親権と単独親権
海外では、多くの国で、離婚後の共同親権・共同養育に関する制度があります。
その方が、子供の健全な人格形成に資するという実証的知見があるそうです。
- 定期的な面会交流を継続したグループの方が心理的に健康
Judith S. Wallerstein, Julia M. Lewis, Sandra Blakeslee. (2001). The Unexpected Legacy of Divorce: A 25 Year Landmark Study - 面会交流をしなかった子供は、自己肯定感の低下、社会的不適応、抑うつなど等で苦しむ
Baker, A. J. L. (2007). Adult Children of Parental Alienation Syndrome – breaking the ties that bind.
などといった研究結果が根拠となっています。
日本には単独親権しかありませんが、別居親が同居親に面会交流を求める法的権利があります。しかし実態としては、同居親が面会交流を阻み、子供と別居親が断絶してしまうケースも数多く発生しています。
父母ともに親権者として適性がある場合、必ずどちらか一方を親権者に決めなくてはならない制度は理不尽だと思います。これが親権や面会交流をめぐる父母の熾烈な争いを生じさせ、父母の溝を深め、結果的に親子の断絶を促進している一面があります。
選択肢の一つとして共同親権があれば、争いが過度に激化することなく、親子の断絶を回避できるケースもあるでしょう。
「DV被害者」と「連れ去られ親子」の両方を共に守ることができる仕組みを、様々な立場の人が知恵を出し合って考えていく必要があります。子供たちのために、活発に議論されていくことを望みます。
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